亡国の海/たま
 
すぐ。亡ぶかもしれない。と。
それは。年金詩人の。妄想に近い。思惟に過ぎないと。
誰もが。思うはずだ。
何時の時代もおなじだ。と言って。

何時の時代、も?
いや
その、何時の時代とやらは
もう、やって来ない
この国の
都合のいい歴史は
使い果たしたのだ

Kは。思った。自分はもう。老いぼれてしまっただけだ。
と。この国が亡ぶなんて。そんな妄想は。夢のない老人の。
思惟に過ぎない。と。つまり。Kの。思い過ごしなのだ。
と。
でも。海辺のゴミが言うのだ。
この国は亡びかけている。と。

Kは。問いかけるしかなかった。
この国は。いつ。どうして。亡ぶのか。と。
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