亡国の海/たま
と。海辺のゴミに。
戦争ではない
災害でもない
この国の人びとが
この国を亡ぼすのだ
それ故に
復興も
復活もない
あと二十年
それが嫌ならゴミを拾え
え。ゴミを拾うの? それでこの国は助かるの?
あと二十年と言えば。Kは。九十二才になる。
おそらく。それは。Kの。寿命だ。
なんだ、そう言うことか
亡ぶのはこの国ではなくて
この私なのか
嘘つきだな お前
この国が亡ぶだなんて
Kは。少し安堵して。今日も。ゴミを拾う。
しかし。
いったい。
何者なのか。
このゴミたちは。
それを語れば。長くなる。あと二十年。
生きて。語り続けるしかない。と。Kは。思った。
それが。
亡国の海辺。に。立つ。年金詩人の。仕事だと。
『終の犬』外伝?
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