亡国の海/たま
 
流されているのだ
この国は

亡国の海へと

海流が運ぶゴミは
何時の時代もおなじだ
と言って
迂闊にも
捨てきれないゴミを
水辺に放置した

平和という
一瞬の隙を突いて
やがて
水辺のゴミは
この国の地下水に浸透する

人びとは
疑う術もなく
その水を飲む
何時の時代もおなじだ
と言って

年金詩人の。Kは。今日も。亡国の海辺。で。
ゴミ拾いをする。Kは。シルバー人材センターの。
会員だった。つまり。ゴミ拾いは。Kの。仕事だった。
海辺のゴミは。年金詩人の。危うい家計を救った。が。
Kは。なぜか。奇妙な不安を覚えた。
この国は。もうすぐ
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