久保俊治著 「羆撃ち」を読んで/山人
 
動物のために自然に返すが、あとは腸の洗浄から何まで、我々がかつて熊狩りでやってきたこととほぼ同等の作業で解体していたようである。ただ、ツキノワグマよりも相当大きい羆であるから、何日もかけて各部位をベースキャンプに運んだという。
 この時代背景は一九七〇年台であり、当時の猟だけの年収は八十万円ほどだったという。今の時代なら低収入だが、その当時の八十万円というのはさほど悪い金額でもなかったのだろう。
 単独猟では、野生に入浸る必要があると久保氏は書いている。人間が立っている時の目線ではなく、四つ足動物の這っている時の目線である。さらに、羆たちの各個体の癖や好きな植物、それらが生えていそうな地形、ま
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