密度流/ホロウ・シカエルボク
 

僅かな振動、それは肉体の中で生まれていた、リズムが求められ、理由は求められなかった、進展が求められ、完成は求められなかった、渇望は凶暴だったが、今夜はそのまま表現されることは望まれなかった、暴風の中でかすれた口笛の旋律を拾うような作業だ、でもそれを成し遂げなければ、今夜いい気分で眠れないことは分かっていた、常にいくつかのパターンが生まれ、たったひとつだけが選ばれた、ひとつ間違えたらそこで終了してしまう、今日はそんな気分だった、肝心なのは今自分に最も適した速度はなんなのかということだった、痛みが生じるほどに耳を澄まし、辺りに散らばるものの正体を掴もうとしていた、二十一時を少し過ぎたところで、上手
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