火だるまパンツ事件。/田中宏輔
 
カリウム水溶液で酸化還元滴定しなければならなかったのです。ぼくのことを手助けすることなどできませんでした。スペクトルを測定している間、ぼくの身体は強烈な便意にずっと震えておりました。そうして、やっと測定し終えたときには、すこうし、汁気のものが、肛門の襞に滲み出しておりました。セルをしまうと、ぼくはすぐにトイレのなかに駆け込みました。白衣を思いっ切りまくり上げ、ズボンとパンツをいっしょくたにずり下げると、ブッ、ブッ、ブリッ、ブリッ、ブッスーン、ブスッ、ブスッと、脱糞しました。ところが、脂汗を白衣の袖で拭きふき、ほっと溜め息ををついた後、ぼくは気がついたのです。ズボンといっしょにすり下ろしていたはずの
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