青空とレモネード?/朧月夜
描いている。空って、どこにでもあるものでしょう。でも、家の中にはない。要するに、わたしの絵は窓の代わりっていうわけね。あるいは……なんだろう」
「記憶? 思い出?」
僕は思いついたままに口にしてみた。
「そうね。そう。きっと『原風景』よ。いつかどこかで見たことがあるような。そんな記憶の中の景色」
「君は素晴らしい画家だと思うよ」
「ありがとう」
僕は心からの言葉を口にしていたし、君の感謝の言葉も率直なものだった。「それだけに淋しい……」とも僕は思う。
こうした会話を、実は君は何人とない人たちと交わしてきたのではないか、と僕には思えた。現実問題として、
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