青空とレモネード?/朧月夜
あれば、僕も話題に乗っていけるかもしれない。
「そう言えばさ、『根なし草』ってあるじゃない? あれって、本当に根のない草だったら面白いと思うんだ。夜になると、こっそりと後ろを追いかけてくるの。枝分かれした茎の部分で歩いてさ……」
「今度はオカルト?」
さすがに僕は苦笑した。どうやら、芸術家のアイディアというものは尽きないものらしい。「無尽蔵」という言葉を僕は思い出していた。そう。芸術家には無尽蔵な想像力がある。それに比べれば、僕のしている仕事に必要な想像力などたかが知れていた。僕は芸術家にならなかった自分を幸運だと思った。とても僕の神経では耐えられる仕事ではなかっただろう。
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)