青空とレモネード?/朧月夜
 
あれば、僕も話題に乗っていけるかもしれない。

「そう言えばさ、『根なし草』ってあるじゃない? あれって、本当に根のない草だったら面白いと思うんだ。夜になると、こっそりと後ろを追いかけてくるの。枝分かれした茎の部分で歩いてさ……」

「今度はオカルト?」

 さすがに僕は苦笑した。どうやら、芸術家のアイディアというものは尽きないものらしい。「無尽蔵」という言葉を僕は思い出していた。そう。芸術家には無尽蔵な想像力がある。それに比べれば、僕のしている仕事に必要な想像力などたかが知れていた。僕は芸術家にならなかった自分を幸運だと思った。とても僕の神経では耐えられる仕事ではなかっただろう。

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