たわわな虚無/ただのみきや
 

魚よ魚原初の苦い沈黙発芽しないことばの種子よ
まぶたを割礼せよ
震えながら裏切って羞恥を匂わせるあの花のように
身投げした女とねじれて対をなすもの
現実こそただのほのめかしではないか
詩こそ実体でわたしという人間がその比喩だ
ことばの中に閉じ込められて地団駄を踏んで
弓で弾かれて鳴け歌えと拷問される
縫い付けろ 擬音に口を開かせるな
くねらせろ その身を蛇のよう
皮膚下を漂う炎の海月 
青い呪いの頓服薬


うすい被膜に包まれた
空白 虚無
被膜の表面にすべてが書き記されている
自分で書いたもの
他人に書かれたもの
記憶のすべて
自分の性格だと思ってい
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