たわわな虚無/ただのみきや
 
ているものすべて
思想とか哲学とか
夢とか目標とか
すべてがうすい被膜の表に
所せましと書き続けられ
隙間がなくなれば
いらなくなったものを消してスペースを開けて
またも書く
消しては書いてを繰り返しながら
裂果と呼べる実はなく単なる劣化によって
やがて被膜は破れ
虚無は圧力を失い
大気へ放出され霧散する
そんな風船みたいなものだと
想い始めてから
わたしは自分の中心
虚無の最深部を探ろうとしている
誰かに目がとまれば
その外側に書かれたことよりも内側の虚無が気にかかる
座標もなければ何もない
虚無に没入して
まるで愛人であるかのようにそれを撫する暮らしが
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