たわわな虚無/ただのみきや
水脈を断たれて土地が干上がって行く
わたしの生涯は幻を耕やすことに費やされた
この胸にいつも寄り添っていた処女地は
人類共通の淫売婦にすぎなかった
精を貢ぎ続けたわたしも
彼女の周囲を飾る白い骨片の一つとなるのだろう
釣り竿の先にカワトンボが止まった
パウダー状の光
マドレーヌの上で斜塔となったメトロノームの涙がコインのように転がってゆく
水面下では目のない大魚が夢を見ている
わたしを書くわたしの夢
象徴するものとされるもの
比喩と実体が置換される世界
現実という長い比喩を
比喩という現実に読み戻す
わたしたちは外側からしか開けられない世界の中に置かれた鍵だ
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