音楽と精霊たち?/朧月夜
 

 とだけ答えても、問題はなかったのかもしれない。ただ、その時には「この先生は使えない先生」という烙印を押されただろう。いくら糊口をしのぐための仕事とは言っても、それは葉子には納得出来なかった。自分では意識していなくても、「かつては音楽家を目指していた」というプライドが葉子にはあるのかもしれなかった。

 弟は未だに、「姉はきっと音楽家として成功する」と考えているらしかった。その道は葉子にとってはあまりにも遠いものであるような気がした。

(今から音楽家ですって? いくら年齢は関係ない時代だからって……)

 結局のところ、葉子は音楽に触れていさえすれば良かったのだ。大学時代に「自動
[次のページ]
戻る   Point(1)