音楽と精霊たち?/朧月夜
 
自動人形」と呼ばれることがあったのも、そのためだ。葉子にとっては、芸術家や音楽家というのはごく普通の仕事の一つに過ぎなかった。演奏家になることと学校の講師になることとは、彼女にとっては大差のないものだった。オリジナリティーなどなくても良い。ただ、葉子は音楽に触れていたかった。

 郊外にある彼女の家(今は自分だけの家)まで帰ってくるには、市営の公園の中を通って来なくてはならない。その道は、雨や雪が降るとぬかるんだ。それが葉子をますます気づまりな思いにさせる。「仕事には満足していると言っても、今のわたしはどこか呪われているような感じがする」――時々そう思うことがあった。

 トーベ・ヤンソン
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