音楽と精霊たち?/朧月夜
うではないらしい。
「僕もそう思う。葉子の出す『ソ』の音が良い」
今度は別の人形が話し始める。「やはり、わたしは狂っているのではないらしい」と、葉子。この家が幽霊屋敷であってもおかしくはなかったが、肝心の幽霊たるべき父や母の面影はどこにもない。話しているのは人形たちだった。家具や本までが、これに呼応して何かを喋っているような感じがする。
「何を驚いているの?」
と、最初に口を開いた人形が言った。それは洋服箪笥の上を離れて、今ではいつの間にか葉子の弾いているオルガンの上に移動している。
「あなたも曲を作ってみたら良いのに!」
人形は再び口を開いて言った。今度
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