音楽と精霊たち?/朧月夜
今度は驚くのではなく、冷静に、「わたしに作曲なんて出来るはずないよ」と葉子は考えていた。
(この屋敷が幽霊屋敷でもべつにかまわない)
そう、葉子は考える。一人だけで気づまりに生きているよりもむしろ……と。
弟には何と言うべきだろう。
「この家、怖いのよ。人形たちが喋るの」
「わたし、この家に帰ってきて良かった。この家はまるで生きているような感じがする」
答え、というか言葉はいくつか用意出来た。そして、いつの間にか自分が即興の曲を演奏し始めているのに気づく。「『前奏曲』に続くものが、もしもフーガでなかったら?」と考え、葉子の紡ぎだすメロディーはどんどん変化し
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