音楽と精霊たち?/朧月夜
 
めてバッハに対する畏敬の念を抱いた。

 部屋のなかの「ざわつき」はまだ収まっていなかった。葉子には、人形たちが喋っているかのように感じられる。(今は自分の)家の中には母が残していった人形やぬいぐるみがいくつもある。たいていはもらいもので、母自身はそうした物を嫌っていたが、幼かった葉子にとってはそれらの存在はまぶしいものだった。

(そう言えばこの子たちも、数十年の時間を生きている……)

 人形に生命があるならば、の話だが。

「あなたの出す『ソ』の音、とても良い感じがするな」

 突然、人形たちの一つが口を開いていった。葉子は驚いた。最初は幻聴か幻覚だと思った。でも、そうで
[次のページ]
戻る   Point(1)