音楽と精霊たち?/朧月夜
 
子は興味を示さなかった。ただし、文学の中でも詩だけはよく読んだ。詩は、文学のなかでもとくに音楽によく似ていた。

(いつか、これらの詩たちにメロディーを付けることが出来れば)

 そんな望みは、もし葉子に作曲家としての才能があれば叶っただろう。しかし、彼女には作曲家としての技量が欠けていた。頭の中に思い浮かぶイメージは、既存の曲を聴いたり、その楽譜を見て初めて生まれるものだった。そのイメージが指先に伝わって、彼女は演奏をする。まるで自動人形のように。

 彼女の演奏を「神がかっている」と評した者もいたが、たいていの聴衆はがっかりした。それは、葉子の演奏があまりにも譜面通りだったからだ。
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