音楽と精霊たち?/朧月夜
 
事に就いた。大学への進路を決める時にも、葉子は両親とさんざんな議論をした。結局、学費も生活費も自分で払う、ということでそのことは決着した。

 葉子は奨学金の支払いを受け、アルバイトをしながら大学に通った。それだけの努力をしても、父や母は葉子に対して良い顔はしなかった。「自分は疎まれている」と感じたことも二度や三度ではない。

 それが今、葉子は自分の実家に帰ってきている。誰もいない、彼女一人きりが住む家に。父と母は何を思って、土地や家を彼女に遺すことにしたのだろう。あるいは、葉子に対する振る舞いを何か後悔しているところでもあったのだろうか。財産など他にはほとんどなく、弟はいくらのお金も受
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