音楽と精霊たち?/朧月夜
も受け取らなかった。
2.学生時代
葉子の大学生活は充実していた。親身に相談に乗ってくれる友人が何人もいたし、懇切に指導してくれる教師もいた。彼女はオルガニストになりたいと思っていた。
しかし、彼女の両親に関して言えば、別だった。ピアノやオルガンを習わせたのは教養のためであって、娘を芸術家にするためではない、と思っていた。葉子が大学の音楽講師という「平凡」な仕事についてからも、それは変わらなかった。
葉子の両親が彼女に連絡を取ってくることはなかったし、彼女自身も実家には一度も帰らなかった。普通、娘が東京の大学に進学すれば、親は心配して何かと世話をし
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