音楽と精霊たち?/朧月夜
 
られるようになってからは、アルバイトに割く時間を減らして音楽活動に深く打ち込めるようになった。ただそれでも、彼女の作曲技術は向上しなかった。きっと、天性の何かが彼女には欠けていたのだった。

(父や母はわたしにピアノを習わせた)

 それは何のためだったのだろうか……と、時折葉子は悩むことがあった。



3.再び実家にて


 実家のあるS市に帰ってくると、そこは東京とは何もかもが違っていた。まず驚いたのは、エスカレーターのスピードが遅いことだ。

(いくら田舎とは言え、こんな違いがあるなんて)

 と、葉子は思った。この街に帰ってきたのは、母の葬儀以来数年
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