零/ただのみきや
 
この光景を
バス通りを挟んだ向かい側の駐車場から見ていた
親子は見られていることに気づいていないし
わたしもまたどこかで見かけても同じ親子だとは気づかないだろう
わたしはこの親子について何も知らない
父親がどんな人か
こどもたちは何が好きなのか
今どんな会話をしているのか
何も知らないでただぼんやり眺めている
少しだけ想像することはできる
わたしもまた自分のこどもを連れて
園バスを待っていたことがあるから
この頃のこどものかわいらしさ
落ち着きのなさ
手がかかり大変なこと
そんな時間はあっという間に過ぎ去って
懐かしむことしかできなくなることを
そして今わたしは自
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