産み辺のカルマ/平井容子
 
し、そういう人間だって気づいたら今までいた人の隣に急に居られなくなったんだよ」
フカは声だけ妙に明るくそう言いながらボロボロと泣いた。こんなときも軽薄なフリが必要なやわらかな心がこの寒いアパートで一人震えているのがあまりに憐れだと思った。
「ほら。」
わたしはフカの手をとって、自分のおへその下あたりへ導く。
「なんて言っていいかわかんないけど、わたしはそんなあんたが可愛くていじらしくて、今すぐあんたをお腹に入れて、十月十日育てて、産んでやりたいような、そんな気持ちだよ」
なにそれ気持ち悪い、とフカは情けない笑い顔で手をのけたけれど、わたしの体を強く引き寄せておでこにキスをした。


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