産み辺のカルマ/平井容子
 
.◯月◯日 渋谷にて


その日は何もかもが色褪せて退屈だった。
だから、渋谷のWOMBを日付が変わる前に抜け出して、フカの家で飲み直すことにした。
入り口を出るやいなや、道玄坂を、人の波を縫って北風がびゅーっと抜けていく。

フカはゲイの男の子で、女のわたしよりよっぽど細い体にぴったりと張り付いた小さなTシャツに細身の革のパンツを履いていた。肩より伸ばしたブリーチで白く抜いたバサバサの髪が、まるで映画ブロードランナーに出てくる未来の人類みたい。
オシャレな漫画の中のキャラクターを真似て開けたラブレットのピアスが少し膿んで腫れていたのだけが現実で、それ以外はまるで実在している感じが
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