黄金/ただのみきや
 

秋の銀杏並木などでも同じように感じることがあるけれど
この日はそれ以上のものだった
もう十五年以上この道を歩いているが
初めてなのだ こんな日差しは
低く垂れこめた厚い雲と雲の間
そのあまり広くない裂け目に澄み切った濃い青空があって
目覚めたばかりの太陽の
まだ炎をまとったままのその顔から赤みを帯びた光が真横に走り
通りに面した公園の落葉松を金色に燃え上がらせている
小さな松葉一枚一枚のけば立ちと冷気のゆるみによる湿り気が
巨大な金屏風をつくり上げていたのだ
わたしは目を見開いたり細めたり白い息がさえぎらないよう
呼吸を止めたりしてしばし見入って 否 魅入られていた
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