黄金/ただのみきや
た
こどものころ金色は好きではなかった
こどもらの間では折り紙の中で一番貴重な色は金色だったが
わたしは銀色のほうがずっと好きだった
銀は白につながるものがある
白には穢れない清浄さを感じていた気がする
ところが金は黄色につながり(黄色も好きではなかった)
なにか汚らしい糞尿に通じるものを感じていたのかもしれない
大人になって金の経済的価値に魅力を感じるものの
所有する気にはならないしそんなものが買える暮らし向きでもなく
かと言って金メッキのアクセサリーをぶら下げる趣味もない
ようするに金ピカが今でも好きではないのだが
この朝見た金色はまったく違っていた
それは森閑として凛としてどこか幽玄を帯び
枯れたいのちをほんのひと時みずみずしく燃え上がらせていた
それは深く記憶に刻まれて消えることのない鮮烈な印象となって
さらに熟成され美化されてゆくことだろう
わたしが所有した黄金の輝きは
(2023年12月9日)
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