夜が騙している/ホロウ・シカエルボク
 
じているんだろう?思えば完全な暗闇を感じていた頃、精神は流動体のようだった、でもいまは、そのところどころに鋭利な針が紛れ込んでいるように感じる、忙しく、なのにどことなく緩慢な流れの中で、日常はいつしか切り刻まれたフィルムのようなものに変わってしまっていた、それは完全な暗闇のせいではなく、静寂が過ぎる夜のせいでもなく、明る過ぎる街中の夜のせいでもなく、夜明け前まで騒々しい繁華街から流れてくる連中のせいでもない、部屋の灯りをつけないことにした、それがいったいなんだというのだ?眠りや、目覚めや、確信や、記憶、本当のところそんなものは、環境によって塗り替えられたりするようなものではないはずなのだ、なぜだ、
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