夜が騙している/ホロウ・シカエルボク
 
だ、なんの問題もなく眠れるようになると精神は必ず袋小路に迷い込む、元来た道を戻ればいいだけなのに、無性にその先へ進み違って、どん詰まりのブロック塀の前でまごついている、塀を乗り越えればいいのかもしれない、でもそれはルール違反なのだ、安定した眠りのせいで自分を見失うのは、そこに自分が存在していないと感じるせいなのだろうか?例えばそれが眠りではなく死だったとしても、俺がそれを認識出来ることは決して無いのだ、そう、そんな経緯で俺はまた眠れなくなった、そして灯りを点けて寝床に横たわるようになった、街中の暗闇は灯りを点けたところでまるで印象を変えやしなかった、そうさ、実際それは暗闇だなんて呼べる程度のものではなかったんだ、俺はなにか、もっと違う風に受信するべきだったものを、灯りの有無なんて形で受信していたのかもしれない、電波時計に目をやったが前に見た時から数分と経っていなかった、あれは本当に動いているのだろうか―?俺はいつだって世界を疑って生きているだけなんだ。


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