蜜柑ふたつ/ただのみきや
 
目は寒がりな二匹の猫
一匹は窓辺に立って外を見る
一匹はこたつの中で夢を見る
景色に重さはなく
重さのないこころとつりあっては傾いて
朴訥に歩を乱す
冷たい針が刺さったままの雲の針山
隠しようがない
雨が雪にかわるまで
苦い泥水と枯葉ばかり喉に詰まって


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時計は出来損ないの時限装置
塵をかきまわすだけ
声を出せない秒針は
うわさばかりで目には見えない
死刑執行人が頭の中までうろつきまわる気配か
別に終末論者の火照った心臓に鎮座した
金時計を覗かせてもらう必要はない
居住まいなど正さずに
日常を愛するふりをして
泡沫の兆しなど気にもせず
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