海螺珠の心臓/あらい
 
から華侈遺風(カシイフウ)だ
         記憶のあとでは
         住めば都もないのだけれど
           この子を抱いている
           ある獣の揺籃
           傷跡ばかりが愛おしいから
           孕んだ跡の残滓
     ごろんとしてかちりとした
       芯のないたわわとでもいおうか
       何本もの脊椎の群れが
       白夜の絨毯でうたた寝している


   褥の傍らにぬるい息を重ね 泡沫の色彩を懐かしく聴く
   狭く苦しい陽翠(ヨウスイ)の、聖文をなぞり。水琴窟が終わるとき
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