自尊心/涙(ルイ)
 
カワイソー ビンボーだけにはなりたくないと
聞こえるように云っては笑い合ってる声を
必死で聞こえていないふりしながら

家に帰っても おかえりと云ってくれる人はいなかった
云ってくれないけど ただいまと云わないと
何かしらが飛んできた
洗濯してあるのかないのかも判別できない服や
食べ散らかしたカップラーメンやスナック菓子の空が
そこら中に散乱している部屋の奥で
けだるそうに煙草を吸いながら
ウィスキーを飲んでる母親
母親のとなりには どこの誰だかわからない男が
上半身裸で座っていた
母親は財布から千円札を取り出し 彼女に渡した
これやるから 寝る時間まで帰ってくるな
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