見上げてごらん空耳を/ただのみきや
戦うなんて疲れるだけ
だったら運命に味方しよう
素直な自分に味方しよう
とがめる声もまた自分
蝶々みたいに踊りながら逃げて
いくつもの鮮烈な印象と恋に落ちる
御覧 空の高いこと
空耳たちが天使や龍のように飛び回っている
*
ちいさな白い蛾はふるえるように
わたしのズボンにしがみついていた
十一月にしては暖かい雨の朝だった
しばらくそのまま歩いていた
蛾は羽ばたきながら股のあたりまで上がって来ると
ふたたび風に流されていった
何度学んでも
同じ失敗を繰り返して来た
気づいても
口を出さず
手を出さずにいられたなら
束の間の風避けぐらいにはなってやれる
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