見上げてごらん空耳を/ただのみきや
 
すずめを追ってヒヨドリは
桜の色葉をくぐりぬけ
共に素早く弧を描く
糸でつながったみたいに

 *

落葉が元気に駆け回っている
ヌードになった街路樹の
先っちょでわずかな枯葉が千切れんばかり
飛ばされないようにしがみついている
来春まで居残る気つもりか
小さな端切れじゃどこも隠せやしない
局部のモザイクなんて
ヌーディスト樹(いつき)は潔しとしない

どっちでもいい
ひっしにしがみつこうと
さっさと飛ばされようと
好きにすればいい
運命と見なそうが
生き様と宣おうが
すべて空耳だ

 *

運命を味方にするなんて出来っこない
運命と戦う
[次のページ]
戻る   Point(5)