……とある蛙さんへの手紙/服部 剛
 

トイレ介助をしようとすれば
あまりに無垢な笑顔で両腕ひろげ
息子は僕にはぐをする 

蛙さん

僕は思春期に失恋という名の挫折をして
?詩?という夢を手に入れました
僕はでくのぼうになってから
人の傷みと哀しみを、知りました 
そうして今も染色体の一本多い息子に
凸凹親父のこの僕が、育てられているのです 

蛙さん

あなたは人の世の闇を視て 
自分の内には影を視て 
やるせなさを
ひと時忘れる酒を飲み 
無数の?詩?を、語り残して
この世を去ってゆきました 

僕が司会をしていた 
『ぽえとりー劇場』の朗読会で 
あの夜
愛する妻への言葉にな
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