彷徨いの計器/ホロウ・シカエルボク
した形があって初めて、記憶は語られやすいものとなる、けれど本当は、ひとつひとつがそうした経緯を持っている、それはただ形式として成り立っているか、そうじゃないかの違いに過ぎない、たったひとつの言葉、たったひとつの感覚、ほんの一瞬の景色、ねえ君、俺たちはいつだって、リアルという幻の中で息をしているんだ、そこにはどんな確信も在りはしない、人はいつだって、一番簡単なものに寄り付いて安心しようとする、でもそれは浅瀬だけで泳いでいるようなものだ、息を止め、決意を持って、飛び込んでみて初めて見える景色がたくさんある、すべてのことが一瞬に過ぎないからこそ、一見確かなものに惑わされてしまうのだろう、けれど、いいかい
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