じゃあね、またね/這 いずる
 
生きるたびに怖いところがふえていくねって
きみがうつむいて
コーヒーカップをなぞりながら、
震える指で、
伏せたまつげを揺らしながら、
他人の「すみません」に肩を震わせる
「音楽をきいてないとだめなんです、
人がわたしのことを言っているようで」
電車に乗れなくなった子が
地元にいるらしくて、
なんの重荷もない真っ白い腕をしているのが
不思議でならなかったの、その子が
わたしなら

カフェに人が増えてきて
小さな声で「出よう」と言った
「酸素がたりない街なのは、早足だからだよ」
追われて息切らして帰った家で
やる事なくて暇、てLINEを打って
一時間待って
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