じゃあね、またね/這 いずる
 

無音に沈む

「人混みて気を使う、だから暗いうちの散歩が一番いい」
空が暗いまま歩く白い息は街灯がうつして
寝起きの冷たい手をあたたかくする
これから来る朝が柔らかく
熱を伝えているのなら
ほんの少し開いた体が朝日をつかまえて
朝につかまえられて
うすく白になっていく心地よさ
体で赤に溶けて白がめぐる
それがずっと続いてくれたら、

――繰り返して。
「なんだかとても怖いことがふえたね」て
きみにいわれて
「そうかもね」てやっと同意できた。
目の前の
人の皮一枚剥けば肉と骨があらわれる
皮一枚隔てたその
恐怖を
うまく症状に浮かべられたら
きっと違う結末だったかも。
まあそれを思ったのは、遅すぎたのだけど。

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