余韻/ただのみきや
 
の鉄筋を拾い上げ
影を壁に刺し留めた
別に魔法の武器でもなんでもない
かつて何かに使われて
とっくの昔に捨てられた
赤錆びた廃材の鉄筋で
影はふるえた
そのうめきは鼓膜ではなく
わたしの下腹部を震わせて胸の内側を這いのぼって来る

影が芯まで黒いのは
隙間なく上書きされ続けた
数えきれないことばのせいだ
それをひとつひとつ剥ぎ取ってゆく
ほとんどすべてが罵り嘲り
「死ね死ね死ね」や「殺してやる殺してやる」が千も万も
破壊や暴力を賛美する歌詞のようなものもあった
筆跡は全部 わたしのもの
影は少しずつ薄くなって
やがてよくある影になり
ついには透きとおって日向
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