余韻/ただのみきや
日向と見分けがつかなくなった
「ひさしぶりだね わたしの青春 」
こんなに澄んではいなかったが
いまなら美化もできるというものだ
たましいが
風をはらんだ帆のようだった季節
さあ いま
色濃い秋の静謐に縁どられた時の三面鏡から
影よ ふたたびすべり出せ
流れに研がれた石のように
時を切り裂き素早く跳ねて
殺意みなぎる矢となって わたしを遠く引き離せ
そうして復讐しろ
つらぬけわたしを 背中から
雨音が
足音だったなら
たったひとりの足音をどうしてつかまえられようか
耳に映る 姿は余韻
生の余韻は死から羽化する
(2023年10月28日)
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