陽の埋葬/田中宏輔
トは、詩人とぼくの前を、ただ通り過ぎていくだけだった。マコトは、ぼくの顔を見て、「カッコええよ、宏輔さん。」と言ってきた。風はあるが、生あたたかく、つぎからつぎに汗が吹き出てくる。何度も裏返したり、表にたたみ直して使っていたので、ハンカチは汗と脂でベタベタしていた。ぼくが、ハンカチで額の汗をぬぐい取りながら、「そんなことないよ。」と言うと、マコトは、ぼくたちの前を通り過ぎていく一人の男を見て、「アウト・オブ・眼中。」と言った。ぼくのことは、と訊くと、「インサイド・範疇。」と言う。一見、ぶっきらぼうに見えるが、それは、マコトがそう見えるように振る舞っているからであろう。ありがとうという、ぼくの言葉の
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