雨垂れが聞こえ続ける限りは/ホロウ・シカエルボク
えちゃいないけれど、きっと生と死の狭間で悪魔と契約でもしたに違いないさ、打ち捨てられた石が泣いている、被服が疫病みたいに溶けた電線が残された天井の照明器具の残骸は、?ぎ取られた耳の穴みたいに彼らの声を聞き続けている、おおん、おおん、おおおおん、ぼんやりとした反響はまるで海鳴りのようだ、稼働している場所よりも空気が重く感じるのは、捨てられてからの時間が堆積しているからだ、雨は止む気配がない、いつだって雨は止む気配がない、たとえこの後青空が戻ってきたとしても、耳の奥で雨垂れはずっとなにかを語り続けるだろう、そしてそれはひとつも言語になりはしない、雨垂れだけじゃない、打ち捨てられた場所も、堆積した空気も
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