連作詩集「自由落下」冒頭十篇/岡部淳太郎
 
い 落下のようだ





それでも
消すに消せない
老いへと向かうこの身の
うす汚さ

それもまた
一つの自由であるか

私はゆっくりと
落ちてゆく
その途上にある
見えるのは 地

それとは反対に
ふわりと飛び立つものがあって

あ、
重力




たがいに引かれ合う力

私には そのような
人もないから
物憂さへと
たがいに引かれて
落ちてゆく

恋人たちが
たがいに引かれて
落下し合うように




誰もがおとなしい
おとなしくなければ
生きてはいけない

そのそばで騒がしく
なにかを予告
[次のページ]
戻る   Point(5)