連作詩集「自由落下」冒頭十篇/岡部淳太郎
い 落下のようだ
4
それでも
消すに消せない
老いへと向かうこの身の
うす汚さ
それもまた
一つの自由であるか
私はゆっくりと
落ちてゆく
その途上にある
見えるのは 地
それとは反対に
ふわりと飛び立つものがあって
あ、
重力
5
たがいに引かれ合う力
私には そのような
人もないから
物憂さへと
たがいに引かれて
落ちてゆく
恋人たちが
たがいに引かれて
落下し合うように
6
誰もがおとなしい
おとなしくなければ
生きてはいけない
そのそばで騒がしく
なにかを予告
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