手紙/由比良 倖
ねえ、まゆさん、そこは寒いですか?
この世界の終わりは、僕には懐かしい
世界には鏡のような川や、一万年も時を経た石造りの建物があるといいます
それでも僕には、まっすぐに張り詰めた白い凧糸の方が美しい
それは天国まで続き、雨の日の笑顔を手繰り寄せる、
あなたはどうですか?
僕は棺にアップルパイを入れて欲しいと思うことがあります
特に好きでもないのだけど、温かい、
白いアップルパイを
さよなら、さよなら、
さよなら、とこんにちは、は似ていますね
さよならは、世界の消滅なんかじゃあり得ない
ねえ、まゆさん、そこには友達はいますか?
あなたはまだ若いから寂しいかも知れ
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