陽の埋葬/田中宏輔
めた夜の一つであった。男は立ち上がって、河川敷のほうへ向かった。樹の蔭から別の男が出てきて、そのあとを追った。これもまた、夜の一つであった。そして、これもまた、夜の一つなのか、エクトプラズムが公園の上空に渦巻きはじめた。さきほどまでは、雲一つ浮かんでいなかった月の空に、渦巻きながら、一つになろうとして集まった雲のようなエクトプラズムがひとつづきの撚り糸のようにつながって地上に降りてきた。それは、公園のなかに置かれた銅像の唇と唇のあいだに吸い込まれていった。公衆便所の裏には、小川が流れていて、その瀬には、打ち棄てられた板屑や翌日に捨てられるはずのごみが袋づめにされて積み上げてあった。そこには、月の光
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)