陽の埋葬/田中宏輔
起き上がろうとしている映像が見えていたが、すぐに非映像的な抽象概念に思いをめぐらせた。イエスとラザロの死の意味についてだった。術者の長が立ち上がった。
「それでは、はじめよう。」という、術師の長の掛け声をもって、術師たち全員が立ち上がった。術者たちは、椅子に縛り付けられた死刑囚たちの魂から、それぞれの持つ術で、エクトプラズムを抽出しはじめた。嗅覚者が手をかざしている死刑囚の身体からは、魂のにおいが泉の水のように噴き出した。嗅覚者のかざした手のなかに、それらの憤流が渦巻きながら凝縮していった。また、詩人の前に縛り付けられていた死刑囚の縫い合わされた口腔のあいだや鼻腔から、綿布が装着された眼窩から、
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