(abuse)/由比良 倖
 
僕がいうと、先生は頼りなげに「永遠ていうのはね由比良くん、」そこで窓の外の、まるで書痙患者の風景画のような雨だれをみると、「あたしの頭のうしろから抜けてった」、
「あなたの舌のしたからわきでてくる、その」

その、そこで、

「傍線のように僕のまつげに止まっていたとりは膨張し」

先生は折れたペダルのような二本の肘を、紡錘形に盛り上げていき、
誰かがリセットボタンを押した、
幼き頃の、
先生を
まどろむ溶岩のように身に纏った、
幽閉された設計の僕。
しかしそれはなにものかが

しかしそれはなにものかが、世界を何十個にも分割した、
いわば赤潮のようなものだった。

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