寂然と水鏡/あらい
 
 
くだをまく 塒のこと

なまぬるく 日々 溢れ出したからだ
 
黄昏、寂然と水鏡に曝す

だれよりもわざとらしく、
えげつなくキレイな
いきをはく
と 何重も 帯を惹く 

空気よりやわらかで 強情で壊れやすい
火がついたような そうでもないような
何処か逃げ出してしまいたかった

夜の虫だ まつりのあとだ 

一服する。
停留所から流れる 蜩を
追いかけていた。
ゆうべだった。その呼吸、

朝焼けまでが未練がましく泣きながら
また腐ってしまう 退色した薄化粧の夏



堰を堪え箱に詰められた手形は 生きているから
吸い寄せられる 紫の
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