陽の埋葬/田中宏輔
 
ナーの曲が流れていました。

きょうも、軒樋の腐れ、錆の染みが、瘡蓋のように張りついています。

窓枠の桟、窓硝子の四隅に拭き残された埃は
いつまでも拭き残されたまま、ますます厚くつもってゆきます。

陽は揺り駕籠の中に睡る赤ん坊のように
──わたしの腕の中、腕枕の中で睡っていた。

二時間一万六千円の恋人よ、
だれが、おまえの唇を薔薇とすり替えたのか。
だれが、おまえの花瓣に触れたのか。

さはつてしまふ、さつてしまふ。

拭き取られた埃が、空中に抛り投げられた!

陽の光がきらきらと輝きながら舞い降りてきた。
──陽が搬ぶのは、塵と、埃と、飛べない鳥だけだ
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