陽の埋葬/田中宏輔
 

一度だけだという約束の接吻(狡猾な陽よ!)

わたしの息を塞いで(ご褒美は、二千円だった)

頽(くずお)れた空に、陽に溺れた蒼白な雲が絶命する。

──だれが搬び去るのだろうか。

壜の中の水(腹のなかの臓腑(はらわた))
水のなかに浮かび漾う壜の中の水の揺れが
わたしの脳も、わたくしの頭蓋の中で揺れています。

わたしのものでない、
項(うなじ)の上の濃い紫色の痣(その疼きに)
陽の病巣が凝り固まっている。

あの日、あの日曜日。
わたしは陽に温もりながら
市庁舎の前で待っていました。

花時計の周りでは、憑かれたように
ワーグナー
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