帰る (散文詩にしてみました 4)/AB(なかほど)
 

水を眺めてくれば、笑い声が聞こえてくるの
だろうか。雨も降っていないのに。君の専攻
はなんだったっけ、君の探していた文書はな
んだったんだろう、君の見たかった世界はな
んだったんだろう。あの店の前で笑い転げて
た君にはもう、もう見えていたんだろうか。
雨を待ちながらゆっくりと歩き、あの日入れ
なかった国文研に入る。もう少しで降ってき
そうだから、もう少しここで探してみる。も
う降らないのかもしれない。もう降っている
のかもしれない。


あの日の雨は、もう降らないのかもしれない。
もう降っているのかもしれない。僕は目を閉
じて、五月雨に降られたなら、君の笑顔が見
[次のページ]
戻る   Point(7)