帰る (散文詩にしてみました 4)/AB(なかほど)
 

えるのだろうか。それとも、あの五月雨に濡
れたなら、君は遠くへ消えてしまうのか。


五月雨ふられあの日の君は。五月雨ふられ今
僕は。雨、洗足池に降る雨を、鈍行列車に降
る雨を、庭の木立に降る雨を、窓の木枠に滲
む雨を、商店街に降る雨を、書架の向こう降
る雨を、あの日の、君の全てに降る雨を。


その雨は、もう降らないのかもしれない、も
う降っているのかもしれない。雨、五月雨ふ
られ君は笑うのか。五月雨降られ君は消える
のか。雨、五月雨ふられ僕はどこにいこう。
もう少しで降ってきそうだから、もう少し目
を閉じてる。雨、もう降らないのかもしれな
い。もう、降っているのかもしれない。雨、
あの日の雨は、もう降らないのかもしれな
い。もう降っているのかもしれない。


  

 
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